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上司と面談 ホームレスのおっちゃんと対話

最近会社を休みがちになっていた(今週は結局火曜日しか出勤できなかった)ので、上司が心配して心療内科の診断を勧められた。

僕としては、この精神的な症状は明らかに仕事が嫌で出ているから、鬱病などはあり得ないと考えていた。案の定、鬱病ではなかった。鬱症状とは書かれたけど、よくある「今、鬱っぽいわー」という症状だけである。会社を辞めれば一瞬で治るだろう。

で、その診察結果を踏まえて、上司から面談を提案された。まずはそのことを考えたい。

 

自分の症状をかなり正直に話した結果、上司も「仕事が嫌で症状が出ている」ということに気付いた。あちゃー、バレちゃったか。まあ、バレてもいいやと思ってたんだけど。

でも、そこからの反応が予想とは違った。「良い年こいた社会人が甘えてんちゃうぞ!」と、丁重に言われると思っていたけど、冷静に「まずは、会社のどんなところにストレスを感じているか考えよう。その上で、会社のその部分で変えられるところは変える。変えられない部分については、別の対処法を考えよう」と言われた。

うっ、何か、思ってたのと違う・・・会社(の上司)なんて社員を奴隷としか思っていないと思ってたのに・・・

 

話し込んでいくうちに、自分の本音もどんどん出てしまった。んで、ついに言っちゃった。

「働いてるせいで休みも力が湧かず、友達と会えず好きなこともできないのが嫌なんです。」

「友達に会えず好きなこともできないから余計に仕事のやる気がでないんです。」

「そもそも根本的に、実は、会社で長い事やっていくのが、ちょっと・・・って感じなんです。そもそも自分の人生について悩んでいるんです。(今も自分のしたい仕事じゃないから、時間を無駄にしているような気がして、鬱になっていてミスも多いんです。でも、お金は欲しいから無理矢理働いてるんです。)」・・・()部はかなり婉曲に言ったので、言葉では伝わっていないと思うが、鋭い人なので、多分言外で伝わっているかも。()部以外も、こんな直接的には言ってないが。

 

上司「・・・うん、そういう人はおるよ。人には2種類いてさ。何でも自分のルールでやりたい人と、誰かの指示で動ける人。前者の人はサラリーマンしていることにすごいストレスを感じると思うよ。そういう人が無理矢理企業の歯車として働き続けることは、本人にとっても会社にとっても不幸やと思うよ。」

おっと、これまた以外な冷静な反応。しかし、これは、辞めろということなのか?給料泥棒扱いされるか?と身構えた。

上司「まー、でも君がどちらかは分からないからな。とりあえず、休職してみるのもありちゃうか?休職するなら心療内科の先生に『会社を休むように』という内容の診断書を書いて貰うこと。そうしたら休んでても給料貰えるから。減額されるけど。」

あれ?何か俺の人生のこと真剣に考えてくれてる?だって会社の利益を考えれば、欠勤扱いにして給料出さないほうが得なのに。

上司「利用できる制度は利用したらいい。しばらくして辞めてから世界一周回ってみるとかもええやろし。ほんで自分がホンマにやりたいことを探すのもええやろ。君はまだ若いんやから、なんぼでもやり直しきくんやから。俺みたいに家庭持っちゃったら、なかなかやり直しなんてきかんけど、それでもやり直そうと思ったらやり直せるんやから。会社の都合なんて考えんでええよ。君が辞めても、新たに人を補填するだけやねんから。」

 

な、なんて懐の深い人だ!何でこんな人が企業にいるの?いや、そもそも会社員はほぼ皆、主流秩序に完全に絡めとられてるという自分の発想が狭量だったのか・・・

でもよく考えてみればこの会社、懐の深さはところどころに表れていた。福岡伸一さんが語っていた働きアリの話を研修の最中に話す人がいたり。

「どんな組織でも、2割は真面目、6割は結構真面目、2割は怠ける。でも、2割の怠け者をリストラしても、残り8割のうちの2割がまた怠け者になるんです。だから、企業も、切り捨てるのではなく、2割の怠け者も受け入れなきゃならんのです。」

この市場原理主義、競争主義の社会において、企業の、しかもかなりの上役がこんなこと言うとは・・・と驚いた。福岡伸一さんがいう、「長い目で見る」ことを地でやっている気がする。そう言えば、長い視点に立っているから、同業他社がリーマンショックでやばい中、この会社は比較的少ないダメージで立ち直った。そして、この業界でのシェア1位になったのだった。

 

ここで今日会った上司の話に戻るが、彼自体が2度も死にかけたことのある人だった。

心臓の大動脈の弁が機能しなくなる病気だ。心臓の大動脈は脳への血管と直接に繋がっている。ここの弁がないと、逆流が起こり、脳への血流量が減少する。それを補おうとして心臓が肥大する(心肥大)。で、その心肥大が原因で、心臓の上半分が機能しなくなったらしい。それである日倒れたと。ステージ4の心臓移植レベル手前の、ステージ3.5だったらしい。でも、ペースメーカーの利用と、人工弁をつける手術でよくなった。

数年して、また倒れた。原因は、人工弁が240°(2/3)剥がれて、その部分が膿になり、大動脈から脳の血管に至り血栓となり、脳梗塞を起こしたからだ。しかも、膿の細菌が血中にしみだし、それを浄化してからでないと手術ができない。約一か月、いつまた脳梗塞が起こるか分からない状態で過ごしたそうだ。一か月後の13時間の手術の末、医師から家族に「どう転ぶかは分からない」と言われたが、事なきを得た、とのことだ。

2度とも、死んでもおかしくない状態だったそうだ。そして、そのような手術などで、合計2年間程、会社を休んだそうだ。「なのに、会社は自分を切り捨てなかった。真面目でお堅い会社やけど、懐の深い会社やと思うよ。」と言っていた。

このような自身の経験からも、僕に対して「俺に比べたら数か月休職するなんてなんてことない。」と言ってくれた。

 

とりあえず、会社への見方は変わった。上司も社員も一枚岩ではない。そんな当たり前のことにも気づいた。自身も、もっとゆったり構えていればよいと思った。とりあえず、休職するかどうかだな・・・

 

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上司と別れた後、煙草を吸いたくなって、大阪駅構内から出た。煙草を吸っていると、ホームレスと思しき煙草を咥えたおっちゃんが、ライターを貸してほしいと言ってきた。火をつけると、隣にちょこんと座る。

おっちゃん「申し訳ないんやけど、200円くれへんかなあ。」

前におばちゃんにも言われたことあるなあ、これ。あの時は学生で金ないから断ったっけ。何か裏がありそうやったし。でもこの人はちょっと違いそう。今は働いてるし、200円くらいええか。

と思って、あげた。ついでに、興味があったのでいろいろ聞いてみた。

 

自分「どこに住んでるんですか?」

おっちゃん「ここらへん(と言って人ひとり寝られるくらいのスペースを指す)」

自分「食事はどうしてるんですか?」

おっちゃん「扇町公園の炊き出し行ったりしてますよ。あと、この辺でも弁当配ってたりする」

自分「夏は暑いでしょう。冬は寒いでしょう。」

おっちゃん「その時は地下に潜る。」

自分「こうやってお金くれる人も結構います?」

おっちゃん「ぼちぼちいますよ」

自分「生活保護は受けないんですか?」

おっちゃん「何か、かっこ悪いからなー。」

生活保護への遠慮。日本人独特の考えだなー、と思った。自分だったらすぐに申請するけど。でも、この人は明らかに健康に問題を抱えそうだと思ったので、生活保護を申請したほうがいいんじゃないかと思った。

自分「現状から抜け出したいとかってないんですか?夢とか、やりたいこととか。今、何かやってないんですか?」

おっちゃん「あんま考えへんようなったなあ。何もやってないです。・・・でも、話し相手がおらんのが辛いかなあ。」

食事などはぎりぎり大丈夫なようだ。体も臭くない。それなりに入浴できているのかもしれない。でも、やっぱり孤独は辛いようだ。

現状から抜け出したくないはずはないだろう。ただ、諦めてしまっているのではないか。いや、それは、自分が上から目線で、「そんな生活いやでしょ?こっちの方がいいでしょ?」と押し付けている気もする。西洋が東洋に文化を押し付けたように。

でも、やはり孤独は辛いのだから、人のために何かした方が良い気がした。そこから人間関係も生まれるかもしれない。だから、押し付けがましいと知りつつも、遠回しでそういうことを言った。そしたら、「同じこと言われたよ。ありがとうって言われるようなことした方がいいって確かにそうですねー」と言っていた。

何か、自分に言えそうなことはそれ以上なかったので、後は雑談をして、1時間くらい喋って帰った。僕も最近寂しかったから結構喋った。

 

でも、自分と彼と世間の人と、そんなに違うだろうか?と思う。

仕事に時間を取られ、もしくは、時間があっても、何かしこりがあって、しんどい自分。

お金と気力がなくて、人間関係を築けず、寂しいおっちゃん。

電車で、疲れた顔で眉間にしわをよせている、幸せじゃなさそうな人々。

おっちゃんが普通にサラリーマンとして働いても、そこまで幸せ度変わるかな?という気もした。

でも、自分がおっちゃんのような生活をしたいか?と聞かれると、いや、それは嫌だ、となる。だから、やっぱり違うのだ。布団で寝られて、飯が簡単に手に入って、パソコンできて、映画見れて、漫画読めて、本読めて、自転車で移動できて・・・物質的なことだけど、僕にはやっぱり最低限必要だ。そして、それは今みたいに働かなくても、軽く働くだけで手に入る。生活保護でも手に入る。

それを拒否するおっちゃんは、おっちゃんの信念を貫いているんだから、それはそれで幸せなのかもしれない。人によって、何が譲れないかは違うんだなー。

 

とにかく、いろんな生き方があるなあ。視野が狭くなって、世間の常識や自分の先入観や過剰な執着などに囚われなければ、この日本での人生は案外楽なものかもしれない。